「藍色のベンチャー」~挫折を繰り返しても人の夢は終わらない!!

小説

こんにちわ、歴史と漫画好き。
いのまんです。

今回は、幸田真音先生作の「藍色のベンチャー」上下巻を読んだ感想です。
現在では「あきんど 絹屋半兵衛」と題名を変えて文庫化もされています。

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「藍色のベンチャー」~作品詳細

作者:幸田真音

出版社:新潮社

ジャンル:歴史経済

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「藍色のベンチャー」~あらすじ

幕末の近江で古着を商う絹屋半兵衛は、妻留津とともに染付磁器に挑む。
最初の窯での失敗、販売ルート開拓の困難など、様々な壁にぶつかりながら、何とか良質な「湖東焼」を作り出すことに成功するが……。

歴史として経済として、2度おいしい!

現在では製造されていない幻の磁器「湖東焼」に半生を掛けた呉服・古着商 絹屋半兵衛を主役にした物語です。

作者の幸田真音先生は外資系企業に務められてから経済小説を書かれている為、歴史小説でありながら「絹屋窯」の事を経済面から書き上げてくるのはドラマ性と整合性のバランスが整えられていてとても読みごたえがありました。

経営や借款の数字面も、綿密な検証を重ねた上で描かれているそうで信憑性とリアリティに江戸時代という歴史を近くに感じられます。

江戸時代の庶民

本作品は歴史だが、よく目にするような新選組や西郷隆盛・坂本龍馬というような英雄譚ではないです。
あくまでも彦根藩に住んでいる”商人”の物語です。

英雄譚は熱く爽快感があり、憧れのような気持ちも生まれる麻薬のようなものです。(もちろん、人物にもよるが)

けど大半の人達は日本という国で庶民として一生懸命生きている。

庶民の暮らしは実際地味だったりするし、英雄と呼ばれる人物と比べると過度に脚色をしなければ対抗できないです。
むしろこの作品は歴史と経済のリアリティを追求するために、過度な脚色をしない外連味のない歴史小説に仕上がっています!

ロストテクノロジー

彦根藩で製造されていたという”湖東焼”。
江戸時代終盤に立ち上げて明治28年には途絶してしまい、現在では復興を目指して製作されているそうですが、一度は廃れた技術となっています。

古着を商う半兵衛にとって新事業、いくらその時期に隆盛を誇った焼き物でも立ち上げしてからどれくらいの採算が取れるかなんてやってみなければわからないです。

けど商人にとって、売れる可能性があるなら手掛けたいし、もっと販路を伸ばしていきたい、自分が亡くなっても自分のやった事業を遺したい。
商売は簡単にはいかないですね。

小説になって物語にもしていますが、半兵衛は地味で辛い時期の方が多かったでしょう。
作中でも日が昇れば窯場に行き、夜の10時を過ぎては家に帰る。
そんな生活の人間に華々しい場面なんてそうはあらわれません。
成功していれば”海賊と呼ばれた男”みたいにもっとドラマ性のある物語になって映画化もされていたんでしょうね。

もしを考えるのならば、江戸末期幕末維新の日本の混乱期で無ければ、大老・井伊直弼は凶刃に倒れなければ、廃れることなく”きびしょの喜平”の名前も湖東焼の名人として残っていったのかなって思ってしまいます。

失われた技術ではありますが、蘇る価値のある技術をロストしたままではもったいないですもんね。
小説と共に復興事業をされている方々を心から応援しております!

誰しもが一人の人間

英雄ではないと言ったが、主人公の半兵衛が井伊直弼との交流場面もあります。
実際に交流があったのかは不明で、幸田先生の創作の部分かもしれません。

英雄ではないと言いましたが、商人・絹屋半兵衛は大老・井伊直弼と同じく地元の未来を考えた同じ人間なんだという事も感じられる作品でした。

最後までお読みいただきありがとうございました。
したっけね!

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