こんにちわ、歴史と漫画好き。
いのまんです。
今回は、佐原ミズ先生の描かれた「尾がしら付き。」を読んだ感想を書いていきます!
佐原ミズ先生は、ホント隠れた名作と呼ぶにふさわしいほどに名前が上がらない・・・
この作品、始めは中学生という思春期の時期に人とは違うという事の劣等感や差別的な扱いをどう乗り越えていくかといった過程を描いている作品です。
ただ中学時期で終わらずに、高校・成人・結婚・出産と成長していく過程で受ける差別と偏見をどう向き合っていくかが見どころとなっている作品です。
多様性を叫ばれている社会の中において、ぜひ読んでいただきたい一作です!
「尾がしら付き。」~作品詳細
作者:佐原ミズ
出版社:コアコミック
発行巻数:全4巻
「尾がしら付き。」~あらすじ
中学2年の樋山那智(ひやまなち)はソフトボール部に所属して練習に明け暮れている毎日。
色白な体質から日焼けに憧れるが、ただ皮膚が赤くなるだけで日焼けせずに周囲の人にも練習をサボっていると思われたり、インドアだと思われてしまう事にコンプレックスを抱える普通の少女。
そしてナチの同級生でこの物語のカギとなる少年・宇津見君。
彼には誰にも言えない秘密がある、それは
「しっぽが生えている」
偶然、その秘密を知ってしまう。
「みんなと違う」ことに戸惑い傷つきながらも、ふたりが心を通わせては離れてまた繋がりを得る。
中学時代から大人になり子供を授かるまでの一代を描ききったハートフルな物語。
「尾がしら付き。」~感想
主人公・ナチの想い人で恋人で旦那様にもなる、宇津美君。
彼のお尻の上側には、子豚みたいなしっぽがあります。
この作品の世界で、しっぽのある種族がいるみたいで宇津美君の母親がしっぽのある種族のためしっぽがあります。
普通の人にはもちろんしっぽはありませんし、この世界でも少数派のため、宇津美君はしっぽを隠しながら学校生活をしています。
そんな彼の隠し事を偶然知ってしまったナチは彼の事が気になる、知りたいという感情が好意へと変わっていきます。
そして付き合う事にもなります。
ただ、この反応はナチが変わり者だったから。
ナチもコンプレックスを抱えていて、その悩みから共感できるところがあったから受け入れられたという事です。
普通の人ならば、異形を見た場合は近寄らないように避けてしまうのが普通だと思いますからね。
しっぽが生えている人間は
「気持ち悪い」
「気味が悪い」
という対象となるでしょう。
案の定、宇津美君の隠し事はクラスメートの悪ふざけによってバレてしまいます。
クラスメートは、「気持ち悪い」と騒ぎ立てて偏見の目を向けます。
挙句の果てにネット上にまでさらされてしまいます。
学校側も宇津美君のしっぽの件を知ると、騒ぎ立てた生徒ではなく宇津美君の転校を促します。
「事なかれ主義」の日本人の典型的判断ですね。
少数派の宇津美君をかばうよりも、多数派の偏見の声を尊重した方が楽だという事ですね。
宇津美君はナチのいる学校でみんなに受け入れてもらえるように頑張ろうとして学校の判断に抵抗を示しますが、
「一緒に生活する生徒の事を考えてください」
という、考えられない言葉を教師から聞いて転校することとなります。
この言葉は「旭川女子中学生いじめ凍死事件」のニュースを見て、さらに印象強いものとなりました。
この事件の中学校の教頭はいじめ被害者の母親に対して
「10人の加害者の未来と、1人の被害者の未来、どっちが大切ですか。10人ですよ。1人のために10人の未来をつぶしていいんですか。どっちが将来の日本のためになりますか。もう一度、冷静に考えてみてください」
このおぞましい言葉は、教育者と言う立場の方から出た言葉です。
10人の未来と1人の未来は同等です。
そこに優劣はありません。
正直耳を疑いたくなるような教師の言葉、その場にいたのなら振り上げた拳を止めずに下ろしてしまいそうな暴言です。
被害者の女の子にも未来はあったのに、加害者はいじめをしていた人たちだけではありません。
被害者が取り巻く環境でした。
心からお悔やみ申し上げます。
話を戻しまして、宇津美君がこの場から逃げ出したのは自己防衛として最良の判断でしたね。
けど、ナチに伝えなかったことによってナチはひん曲がった性格になってしまいます・・・
伝えられないですね、まだ中学生の宇津美君ではナチを守る手段が見つからなかったでしょうから。
けど、安心してください。
ちゃんと出会えますから。
そして、二人は結婚して子供も授かります。
しっぽのある女の子を。
子供の成長には周りのケアが必須ですが、住んでいる街でしっぽがある事を認知してもらって、普通に暮らせる環境作りをナチと宇津美君はしています。
物語の答えの持っていき方は、しっぽを持った子だという事を認知させるということでした。
人は知らないものに恐れをなして集団で省こうとしますが、逆に集団が受け入れさえすれば、輪の中に入り込むことが出来ます。
しっぽを持った人間とは一生会う事はないと思いますが、肌の色が違う人間・国籍が違う人間とは接する機会は年々増えていると思います。
自分がその時、全くの偏見がないと嘘になってしまいます。
声をかけられたら、驚いてしまいましたから。。
ただ、その機会があると思ってさえいれば対応も心の準備も変わっていきます。
そんな思いを感じられて、自分の子育てにも繋がる良い作品でした。
最後に
安土桃山時代の織田信長は、外海から鎖国状態でアジア人以外を見る機会も少ない中で、黒人の方を自分の配下にしたのって異次元の考え方ですよね。
そして、佐原ミズ先生は相変わらず良作量産漫画家です。
これからも応援し続けます!
ではでは、最後までお読みいただきありがとうございました。したっけね!
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