こんにちわ、歴史と漫画好きのいのまんです。
不屈の名作と呼ばれたり、エヴァの庵野監督最後のTV放送監督作品だったりして、未だにカルト的人気を誇る「彼氏彼女の事情」ですが、もう完結して15年以上が経過した現在でも根強い人気があります。
カレカノは単純な恋愛漫画を描いていたわけではなく、高校3年生の時に起こった事柄、
「雪野を騙していた有馬」
「有馬の本心に気が付く雪野」
「有馬の闇を開放する雪野」
この点だけが最高であり、この13巻~15巻にかけての心理描写が秀逸だった事、そして高校3年間の人間的成長を描き切ったからこそ現在でも名作と呼ばれる作品なのだと思っています。
かなりドロドロの物語中盤ですが、物語の最重要局面がここなんです。
雪野を諦めた有馬
二人の関係は形骸化させてしまった原因として、有馬と雪野が一年時の文化祭後に雪野が放った
「私、もう一番を狙うのやめる」
何気ない雪野の一言が、有馬の孤独を強めてしまう原因となっています。
有馬には広い世界を持っていると勘違いした雪野
雪野に本心を見せずに隠そうとしていた有馬
1年時の時点では有馬の方が雪野を騙すことに成功しています。
(成功っていうのも変ですが)
今まで雪野は勉強第一で、視野の狭い生き方をしていたと自覚して様々な経験を積もうという考え方です。
しかし有馬は自分自身の心の闇を見せたくない、見せられない、バレたくない、バレたら嫌われるからと後に本人が言ったように逃避している状況だと思います。
この時点での二人は、まだ幼く相手を中心に考えるよりも自分中心で相手を考えている精神状況、要はまだ子供ですね。
ただ、幼くもポジティブに前を見続ける雪野と自分の殻に閉じこもってしまった有馬。
二人で誓った「本当の自分なる!」という事は、二人で足並みそろえていくには言葉で言うよりも遥かに難しい事でした。
高校3年生、完璧となった有馬総一郎
3年生になった有馬は、全国高校模試1位、剣道でのIH優勝、そして県下一の高校の副会長(会長は雪野)として手腕を振るいます。
磨けるところは磨いて、TV出演も果たして容姿端麗・文武両道な完璧超人となった有馬は世間的ステータスを勝ち得たと言えます。
この頃から、ブラックな有馬が現れます。
普段学校で見せている柔和な有馬と、今まで自分の事を虐めてきた有馬の親戚たちに対して見せるブラックな有馬。
本当の感情を押し殺して生きてきた有馬ですが、世間的な地位を得た事で有馬の事を無視し続けた伯母の詠子も彼を無視できず挨拶に応じて、有馬のいとこたちは簡単に退けます。
今まで鬱屈していた野心と復讐心を初めて表に見せます。
有馬に忍び寄る不審な影
黒い復讐心にかられる有馬の元に、TV出演をした事をきっかけに自分を捨てたはずの実の母親が現れます。
定期的に会いたいという母親の申し出を、育ての親に悪いという思いから始めは断りますが、父・怜司の話を出されて好奇心から面会を続けていく事になります。
しかし、再度会う事を拒否した有馬に対して実の母親がバッグで殴りつけて更に暴行を加えていくと堰を切ったように幼少の頃の記憶がフラッシュバックして気を失ってしまいました。
有馬が隠したい過去(思い出したくない過去)とは、幼少期に実の母親から受けた虐待についてです。
有馬が床に倒れている間に実母はベッドで熟睡している姿を見て改めて実母の愛情の無さを実感する有馬でした。
家に帰ると実母と会っていたことがバレて喧嘩となり、家を飛び出し浅葉の家に逃げ込みます。
浅葉は快く受け入れますが、雪野が浅葉の家に行き有馬と会いますが虚無な目をした有馬は「会いたくない」と言い、追い返されてしまいました。
雪野が見せた2年間の成長
高校1年の文化祭後、雪野は自分の世界を広げ一番にこだわらず前に進み続ける事を選択しますが、有馬にとってトップに居続けることが自分の価値観の一つだったために雪野は同じ道を歩んでくれる人だと無条件に期待してしまっていました。
雪野は有馬が言った「成績落ちても知らないよ」という、小さな小さなヘルプに気が付くことができずに有馬は自分自身の闇へと落ちていくのでした。
高校1年秋から物語が再開されるまでの高校3年の秋までの約2年間を、有馬は雪野と共に歩む道を諦めて一人で歩むこととなります。
2年間闇に染まってきた有馬に対して、雪野は神々しい成長を遂げます。
株で小金持ちになったり、生徒会長やってはアッと驚く企画力を発揮して学校にかつてない平穏ともたらしたりして、、勉強しかできないと自己評価していた時代から(決してそんなことは無かったと思うが)、格段の成長を遂げています。
雪野は有馬に対してはっきりはしていないが違和感がありました、たまに他人のように見えると。
そして有馬に対しての違和感が核心に近づいたのが、有馬が本当の母親と出会ってからです。
ずっと嘘をついていた雪野には頼ることができない有馬は浅葉を頼りますが、雪野は有馬の嘘に気が付き浅葉に問いただしています。
雪野は一度見逃してしまったが有馬の本心へとたどり着きます。
有馬の崩壊と再生
雪野は何度拒絶されても総一郎との対話をしようと立ちふさがります。
ついに総一郎は本音を彼女にさらし、自分と彼女が似ているようで本質はまったく違うことを告げます。雪野は2年ぶりの彼の本音を聞き涙しました。
総一郎は彼女の目に失望が浮かんだことを感じ抑えていた感情を剥き出しに
して怒鳴り、雪野を押し倒して雪野が気が付いたときには上着がかけられていました。
その夜有馬はカッターを左手に刺しました。
輝ける太陽、雪野
雪野は有馬が左手から出血していることに気付きます、有馬の弱音を雪野は叱りつけて、同じ傷を作ったら信用するかと良い窓ガラスを割ります。
有馬が彼女を恐れつつも魅かれてしまうのだが、自分が苦しんでいたのは虐待されていたからだったのかという考えが浮かびます。
雪野はそんな有馬の内面を見抜いており、有馬は愛されたかったんじゃない、愛したかったのではないかと、彼の心は解きほぐれ彼女を抱きしめ倒れまます。
彼の目が覚めると病院のベッドにおり、かたわらで雪野が寝ており、彼はまた涙を流し自分が心を手に入れたことを感じます。
最後に~
カレカノ開始当初の爽やかラブコメとは一線を画して、作中屈指のドロドロ展開となっている13~15巻。
ラブコメを求めていた人からすれば賛否両論あると思いますが、高校1年生の時点では、有馬の本心に気が付けなかった雪野が2年間の時を経て彼の本心へとたどり着くRPGの作り方が、有馬の闇の部分を描き切ったからこそ女性のみではなく男性にも進められる作品へと昇華したと考えています。
二人が本当の意味で見つめあい話し合いぶつかり合うシーンに、こちらも涙を流して感動してしまう事間違いなしです。


[著]津田雅美

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