甚夜は復讐なんてできないかもしれない「鬼人幻燈抄 昭和編 花街夢灯籠」11作目感想

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こんにちは、歴史と漫画好き。
いのまんです。

今回は、小説版「鬼人幻燈抄 昭和編 花街夢灯籠」を読んだ感想・ネタバレ有りで書いていきます。

昭和に入り、ノスタルジーを感じる時代背景へと変わりました。

江戸時代から連綿と続く鬼人幻燈抄の物語で、昭和のたった一時の女性とのエピソードがこんなにも胸に響くなんて。
人の想いは時間では無く、どれだけ濃い時間を過ごしたかという事なんですね。

ネタバレ含みますので未読の方は要注意

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「鬼人幻燈抄 昭和編 花街夢灯籠」~作品詳細

作者:中西モトオ

出版社:双葉社

ジャンル:和風ファンタジー

発行巻数」既刊11巻(2022年10月現在)

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「鬼人幻燈抄 昭和編 花街夢灯籠」~あらすじ

昭和三十四年(1959年)、甚夜の姿は「鳩の街」と呼ばれる花街にあった。

戦後、赤線地帯として栄えた東京の下町で彼が探すのは、マガツメの娘と思われる花の名をした娼婦。

だが、気づけば甚夜は、「鳩の街」自体の怪異に取り込まれていた――時代に取り残された“花街の姿”をしっとり描く昭和編。

存在しないはず街・鳩の街

時は昭和34年、戦後14年が経った東京にかつてあった花街が舞台です。
夜鷹と言い、花街と言い、欲望が渦巻く場所には怪異は付き物です。

舞台となった”鳩の街”、赤線街と呼ばれる娼館が立ち並ぶ街ですが、この街は昭和33年には”売春禁止法”が成立していて、カフェ街自体が無くなっているはずの幻の街。

実は今回、蕎麦屋嘉兵衛の娘であり鬼でもあるおふうが再登場すると思っていました。
この幻の街もおふうの異能の力かと思いましたが違いましたね。

色と夢を売る花街は、捨てたはずの未練が残る街。

今までの強烈に感情を揺さぶるというよりも、どこか懐かしさ・ノスタルジックな想いを感じる”鳩の街”の物語です。

鳩の街に住む者

忘れられないを想いを引きずった者たちの街。
ここに住む人々は”未練”を抱えています。

春を売る仕事に流れ着いた方たちは、人それぞれ大なり小なり後ろめたい気持ちがあるのではないかと思います。
普通の街でサラリーマンをしながらお金を稼ぎ、主婦として家庭を守っている方よりも何かかしら肩に荷物を背負っているのでしょう。

桜庭ミルクホールの店長。
アプレ派と呼ばれた娼婦・あけみ。
ほたるという一人の娼婦。

家族のこと、戦中戦後の中ですれ違いながらの恋、仲間から取り残された事。
登場人物が抱えていた未練によって幻の”鳩の街”に取り残されています。

激しく感情が揺さぶられるような事ではないです。
何故かと言えば、自分の身にも似たようなことが起こり得るかもしれないという共感からくるもの。

親・恋人・友人、良い思い出ばかりでは無いです。
一つ間違えれば自分も”鳩の街”の住人になっていたと思ってしまうと、自分が物語の当事者のように感じてしまいました。

”男はつらいよ”という映画は回によりますが寅さんの恋を描きながらも、出演する女性たちが抱える未練を断ち切るお手伝いをしているのが寅さんです。

「人にはあのときはああしなければ良かったという後悔と、あのときああしておけば良かったという後悔があるものです」

浮世離れした甚夜と寅さん、性格は違えど昭和には後ろ髪惹かれるノスタルジーが必要だった時代でした。。

花の名をした娼婦

鳩の街にいる”七緒”という娼婦。
マガツメの切り離した一部です。

昭和編が終われば、平成に入り甚夜はマガツメとの対峙となります。

甚夜も、読者も鈴音の気持ちを知らなければなりません。
鬼に覚醒してしまうほどに”大好き”な想いを知らなければ、最終決戦で剣筋も読み手も鈍ってしまいます。

鈴音が切り取っていった花の名の感情。
兄への愛情を切り捨てていきました。

敵対しなくてはならないと分かった上で邪魔な感情を切り落とした

向日葵~花言葉・私は貴方だけを見つめてる~能力・遠隔視
ずっとあなたを見ていたいという鈴音の一番初めの感情

純粋でただ甚夜の傍に入れればそれだけでいい、だから白雪と一緒になっても構わないという純粋な気持ちを一番初めに切り落としています。

地縛~花言葉・束縛~能力・拘束
あなたを縛り付けたいという独占欲
本当は渡したくなかった、ずっと家にいて一緒にいてほしかったという口には決して出せないけど思い込んでいた気持ち。
文言は強くなったけど、向日葵の想いと変わらないです。

東菊~花言葉・しばしの慰め~能力・忘却
自分の事は忘れて欲しいという願い
恋というよりも鈴音の悲鳴、忘れないでほしいという願いを断ち切った想いでしょう。

古椿~花言葉・私は貴方を常に愛しています~能力・人を操る
あなたを自由にしたい、マガツメとしての気持ちとは反比例
忘れてください、あなたを自由にします。
東菊と古椿の感情を捨てなければ、戦う事ができなかったから。

水仙~花言葉・自己愛~能力・対象への干渉を使用者に移し替える
最後、七緒に付けられた花の名は”水仙”、しかも黄色い水仙です。
黄色い水仙の花言葉は

”もう一度愛して”

鈴音にとって一番認めたくなかった、愛されたいという願い。
兄ちゃんの気持ちを一番に優先したいという鈴音の感情の中で、”愛して”では無くて”もう一度愛して”は願ってはいけない感情。
鈴音にとって七緒の想いは信じたくない受け入れ難い本音。

愛してほしかった。

兄の幸せを願っていた鈴音にとって行き場のない想いは、そのまま切り落とした七緒の感情でした。

七緒が甚夜に同化の力で受け入れてほしいと言ったのは、鈴音の根底にあった願いを受け取ってほしかったからでしょう。

寂しく、切ない。
これから平成編で対峙するはずだけど、切り離した感情は覚えておかないといけない鈴音の本音です。

七緒は母のために何も出来なかったというのが未練

最強の退魔師

大正編に出てきた三枝小尋、本木宗司。
吉隠の策略によって亡くなった小尋、呆気なく終わったこの話が昭和編に関わってきます。

甚夜への復讐をするために。
今回の機会はマガツメと会った時の大きな糧となるんでしょう。

灯篭を思い起こして読んでほしい

副題の”夢灯篭”という言葉を、読んでいるときに思い出せばおふうが出てこない事は早期に分かりましたね。

灯篭は、”供養”や”鎮魂”道に迷わないための灯です。

おふうは鬼なので寿命で亡くなる事は無いですから、出てくるとしたらまたの機会。

ほたるに想い馳せて再読します。

ではでは、最後までお読みいただきありがとうございました。
したっけね!

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