「黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ」2巻感想~フランケンシュタインが作った怪物の正体

漫画 

こんにちわ、歴史と漫画好き。
いのまんです。

今回は、藤田和日郎作「黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ」2巻を読んだ感想です。

フランケンシュタインの作者メアリー・シェリーをモチーフにしたモダンホラー作品。

相変わらず藤田和日郎先生らしい作風だが、それに加えて昨今のご時世的な内容もしっかり取り入れています。

1800年代初期、女性の権利も題材にしています。
歴史とファンタジーを融合させた怪作品、現代を生きる読者にどう刺さるか要注目です!

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「黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ」~作品詳細

作者:藤田和日郎

出版社:講談社

ジャンル:ゴシックホラー

発行巻数:既刊2巻(2022年11月現在)

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「黒博物館 三日月よ、怪物と踊れ」~あらすじ

義父である准男爵の命を受け、メアリー・シェリーが潜入した女子寄宿学校は、絶望的なところだった。

生徒のため改善しようともがくメアリーに、ついに校長一家の最悪の暴力が襲いかかった時ーー月光の下にポニーテールの旋風〈せんぷう〉が奔〈はし〉った!

ベストセラー小説家と〈怪物〉女剣士のヴィクトリアン伝奇アクション、意外なゲストも登場して新展開へ!!

過去・現代、未だにぬぐえぬ蔑視

時代は1800年代イギリス。
メアリーは息子を義父の遺産継承者とするため、義父の依頼によってとある寄宿舎学校の実態調査に行きます。

一巻でも女性蔑視と呼べるセリフが随所に飛び交っていましたが、今回の登場人物たち立も輪をかけて女性に対してひどい言葉が飛び交っています。

また男性側の女性蔑視も申ことながら、長年男性優勢で生活して教育されてきた女性が女性のあるべき理想の姿を主張しています。

「女は結婚して、いい女房になって家を切り盛りするってのが幸せさ」
「女はしょせん男に縋って許しを請うことしかできないってわからせてやんな!」

上記のセリフは、とある寄宿舎学校の女性校長が言ったセリフですが女性は良い夫を持ち家庭に入り家族を守っていく。
日本だけではなく世界的にもスタンダードな考え方だったんですね。

劣悪な環境

全部の学校がそうだというわけではないでしょうが、今回出てきた女の子用の寄宿舎学校はひどい環境です。

隙間風の吹く教室、授業とは名ばかりの女性蔑視の洗脳教育、硫黄の入ったまずいご飯、汚い服に棺桶みたいなベッド。

金のことしか考えない教師たちが、彼女の親からの仕送りも取り上げて手紙も渡さない始末。

口答えするのは良い妻にはなれない。

作者の藤田先生は胸糞悪い典型的な悪役キャラを描くのが気持ちいいくらいに上手です。

校長がメアリーに
「今までも男性に守られて生きてきたのだろ?」
「お情けで男の世界に”間借り”させてもらってたんじゃないかい?」

という言葉を否定することができませんでした。

そこでエルシィが表れて校長のいうことを否定します。
エルシィは今でいうと”無敵の人”ですね。
「あたしはアンタに判断される筋合いはない」

女性による女性蔑視すらも完全否定するエルシィの言葉がとても気持ちがよいです。

最終的には包帯だらけのエルシィによってこの学校は解体するという流れとなります。
結局はまた似たような環境の学校が作られてしまっているということが示唆されている所を見ると根付かれた女性蔑視の環境は変えられないということでしょう。

匿名で出版された著作

今回の主人公のメアリー・シェリー、当時のイギリスとしては稀な女性作家さんです。
また母は「女性の権利の擁護」という本を書かれた思想家でもあります。

メアリーが「フランケンシュタイン」を書き上げて出版に至るとき、名前は明かされずに匿名という形での出版となりました。

女性作者だとわかると差別的な目が入って正統な評価が得られないということからです。

管理人としては男性・女性、視点の違う描かれ方をしますし、男性である自分の想像と違う描かれ方をする女性作家さんの作品が大好きです。

しかし、往々にして自分の想像を超えることをする逸脱するものというのは権力による排除の対象となったりします。
「フランケンシュタイン」という作品、現実では女性作者だということを隠しても当初は批評家たちからは高い評価は得られなかったようです。

男性が描ける”恐怖”の質と全く違ったこと、これまで出てきた作品とはあまりに感性が違ったことが評価されなかったことが要因でしょう。

フランケンシュタイン博士が作った怪物

「フランケンシュタイン」という作品に登場する怪物、この怪物の正体はメアリー・シェリー本人だと言及しています。

メアリーは夫を含めた4人で会談話を作るという話題の中で作り出したのがこの「フランケンシュタイン」という物語の根幹でした。

この怪物、一体どこから生まれてきたかというとメアリー本人だということです。

メアリー的には、男の子を望まれていた父の期待に反して女性として生まれてきてしまった事、作家として女性という立場であること、自分が女性だという後ろめたさが男でありたかった自分という怪物を生んでしまったということです。

女性として生まれてきてしまった事がメアリーの中に怪物を生み出してしまったということに疑問を感じる人もいると思いますが、女性蔑視の激しい時代に平等に扱われない一人の人間として扱われないということが、メアリーの中の怪物となっています。

時代に翻弄押された女性ということですね。

藤田先生、女性作家と女性の権利からよくこんな発想が生まれてくるもんだと感じました。

最後までお読みいただきありがとうございました。
したっけね!

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